離婚にあたって財産分与を求めるにはどうすればよいでしょうか?

(質問)

 夫と離婚することになりました。私たち夫婦には結婚後に貯めた夫名義の預金があるので、離婚するにあたり夫に財産分与を求めていますが、話し合いがまとまりません。財産分与を求めるにはどうすればよいでしょうか?

(回答)

 夫婦の間に結婚後に協力して作った財産がある場合、離婚にあたって一方から他方に財産の分与を求めることができます。夫婦の間で話し合いがまとまればよいのですが、まとまらない場合、家庭裁判所で解決せざるを得ません。
その場合、財産分与だけでなく、離婚自体についても話し合いがまとまらないような場合には、最終的には訴訟により解決することになりますが、調停前置といって、まずは離婚調停を申し立て、調停の中で財産分与を求めていくことになります。調停が成立しなかった場合には、改めて離婚と財産分与を請求する訴訟を提起することになります。
 他方、離婚が先に成立し、財産分与だけが問題になっている場合には、最終的には家庭裁判所の審判により裁判所に決定してもらうことになり、いきなり財産分与の審判を申し立てることも可能ですが、この場合にもまずは財産分与の調停を申し立てることが多いように思われます。調停が不成立になった場合には、そのまま審判に移行します。なお、財産分与の請求は離婚のときから2年を経過するとできなくなりますので、その間に調停を申し立てる必要があります。
いずれの場合も、調停は相手方の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てることになります。


 (担当弁護士)
  狩倉博之

カテゴリー: お金のこと, 離婚

大雨の時など、他の人の畑の「土」が私の土地に流れ込んで困っています。

(質問)

 高低差のある二つの土地があります。高い方の土地は農地です。大雨の時など畑の「土」が私の土地に流れ込んで困っています。土砂の流入を防止する対策をとってはもらえないでしょうか。
(回答)

 ご相談のケースの場合、農地の「土」によってご相談者の土地を所有している方は、その所有権が侵害された場合、侵害している人に対して、侵害を止めるように請求することができます。(物権的妨害排除請求権)。また、将来侵害されるおそれがある場合には、侵害をするおそれがある人に対して、侵害が起きないように請求することもできます(物権的妨害予防請求権)。
 妨害排除や妨害予防の請求をした場合、請求を受けた相手方と請求者のどちらが費用を負担するか、例えば、本件の場合、土砂の撤去や流入防止対策のための費用を農地の所有者が負担するのか、ご相談者が負担するのかという問題があります。この点、大災害など通常必要とされる注意を払っても被害が避けられない不可抗力の場合や請求者にも落ち度がある場合は別として、請求を受けた相手方が負担するのが一般的です。
 ご相談のケースの場合、畑の「土」がご相談者の土地に流れ込んで、現在もそのままの状態になっている場合は、農地の所有者に対して、流れ込んだ土砂をご相談者の土地から撤去するように請求することができます。また、今まで大雨の際に何度も土砂が流れ込んだことがあれば、今後も大雨の際には同じようにに土砂が流入するおそれがあるといえるので、今後土砂が流入することがないように、例えば防護擁壁工事や水路の整備など必要な予防措置をとるように請求することができます。また、土砂の撤去や予防措置を請求した場合の費用については、未曾有の台風などでない限り、通常の大雨程度であれば、農地の所有者がきちんと注意して対策をしていれば土砂の流出を防ぐことができるため、不可抗力とはいえないので、いずれの場合も農地の所有者が負担することになるでしょう。

 (担当弁護士)
  寺澤恵美

 

カテゴリー: 土地・住宅のこと

父親の死後、父親の相続をめぐって兄弟間でトラブルにならないようにするには、どうしたらいいのでしょうか。

(質問)

 兄が多額の負債を背負っています。父親の財産もあてにしている様子です。
父親の死後、父親の相続をめぐって兄弟間でトラブルにならないようにするには、どうしたらいいのでしょうか。

(回答)

 亡くなった人(被相続人)が遺言を残していない場合、被相続人の財産は民法で定められた割合(相続分)に応じて相続されることになりますが、遺産の評価・分け方をめぐって相続人間で協議がまとまらず、長期の争いになることが少なくありません。
 一方で、法的に有効な遺言が存在する場合には、基本的に遺言書で被相続人がしたとおりに遺産が分けられることになりますので、相続手続等も円滑に進むと考えられます。
 このように遺言書は、遺産をめぐる相続人間の紛争を防止するのに役立つといえますが、遺言はあくまで被相続人の自由な意思に基づき作成されなければなりません。質問の場合、仮に弟が父親に無理に遺言書を書かせるようなことをすれば、遺言書の効力が問題となったり、相続人の欠格事由(民法891条4号)が問題となったりする可能性があります。
 また、遺言の方法については、複数の方式があり、それぞれの方式について民法で厳格に規定されていますので、せっかく作成した遺言書が無効と判断されることのないように、それぞれの規定に従うこと、遺言の内容を明確にすること等の注意が必要です。通常利用されている自筆証書遺言の場合、全文自筆により作成する他、日付の記入が必用で、署名・押印も被相続人本人が行うことが必要です。これらの要件を欠くと無効になりますので、費用がかかりますが、公証役場で公正証書遺言を作成するのが確実です。
 仮に父親が弟に有利な内容の遺言(例「財産の全てを次男(弟)に相続させる」)をした場合であっても。民法は、兄弟姉妹以外の相続人には一定割合の相続財産(遺留分)を保障していますので、兄はこの遺留分を弟に主張していくことができます。したがって、相続争いを防止するには、この遺留分にも配慮した遺言書を作成することが望ましいといえます。


 (担当弁護士)
  吉田瑞穂

カテゴリー: お金のこと

子どもである私に亡くなった父親の借金の支払義務があるのでしょうか?

(質問)

 母親と離婚してから疎遠だった父親が亡くなったことを知りました。定かではありませんが、借金も抱えていたようです。父親が住んでいたアパートの大家さんから、滞納していた家賃の支払を求められています。子どもである私には支払義務があるのでしょうか?また、これからも父親の借金の請求を受け、支払わなければならないでしょうか?
(回答)

 子どもは亡くなった父親の相続人であり、相続人は亡くなった人(被相続人)の権利だけでなく、義務も相続しますので(民法896条)、相談者は滞納家賃はもちろん、父に借金があれば、それを支払わなければならないことになります。
 この点、父親が亡くなったことを知ってから3か月以内に相続を放棄すれば、相続しないことになりますので、滞納家賃その他の負債を負うこともなくなります(民法915条第1項)。相続放棄は家庭裁判所に対して行うことが必要です。3か月以内に放棄しなかった場合や、3か月の間に被相続人の財産を処分したりすると相続放棄をすることはできなくなり、相続を承認したことになりますので、注意が必要です。なお、やむを得ない事情がある場合には、家庭裁判所が認めれば、3か月の期間を延長することができます。
 相続を放棄すると、はじめから相続しなかったことになるので、仮に父親に負債以上の財産があった場合でも、資産のみを相続することはできませんが、限定承認といって、被相続人の資産の範囲内でのみ負債を負えばよくなる方法もあります(民法922条)。限定承認は相続人全員で行うことが必要で(民法923条)、その後の手続も複雑ですので、詳細について弁護士に相談されることをお勧めします。

 (担当弁護士)
  狩倉博之

カテゴリー: お金のこと

家族限定の車両保険に加入していたが、長男が無断で友人に車を貸してしまい人身事故を起こしてしまった。

(質問)

家族限定の車両保険に加入していたが、長男が無断で友人に車を貸してしまい人身事故を起こしてしまった。今後、自賠責保険を超える損害賠償を請求される可能性がある。この場合、その損害を長男の友人に賠償させることはできるのか?また、所有者責任を問われるのか?
(回答)

実際に自動車を運転し、過失により人身事故を起こしたのは長男の友人ですので、長男の友人は、被害者に対し損害賠償責任を負っています(民法709条)。
もっとも、自動車による人身事故については、「自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)」も損害賠償責任を負うことになっています(自動車損害賠償保障法3条)ので、質問者がこの「運行供用者」にあたると、質問者も被害者に対する損害賠償責任を負うことになります。
「運行供用者」にあたるかどうかについて、裁判例は、被害者救済の点から広く自動車の運行による危険を防止できる立場にある者は責任を負うべきと考えているようであり、間接的であっても自動車の運行をコントロールできる立場であれば、「運行供用者」と判断されることが多いようです。
ご質問の場合については、自動車の所有者である質問者が家族である長男の自動車使用について容認していたと思われること、その長男の意思で友人に自動車を貸していることから、質問者は間接的に自動車の運行をコントロールできる立場にあったといえ、質問者は「運行供用者」にあたると考えられます。
質問者が「運行供用者」にあたる場合、質問者は長男の友人と連帯して損害賠償責任を負うことになりますので、質問者が被害者から損害賠償を請求された場合、被害者に対し損害賠償金を支払わなければならず、長男の友人に請求するように求めるなどして支払を拒むことはできません。
なお、質問者が先に被害者へ損害賠償金を支払った場合には、本来長男の友人が負担すべき賠償金額の全部又は一部について、質問者から長男の友人に支払を求めることができます。

 (担当弁護士)
  加藤修一

平成25年4月17日

カテゴリー: 事故のこと

父親の甥の借金の抵当権を取り消すことはできるか?

(質問)

Aは父親から相続した土地を抵当に借金をしたいと考えていたが、Aのいとこ(父親の甥)が抵当に入れてすでに借金をしていた。この借金を父親が同意をしていたが確認できていない。この借金の抵当権を取り消すことができるか?
(回答)

土地を抵当に入れるには、土地の所有者が抵当権者との間で抵当権設定契約を締結し、法務局で抵当権設定登記を行うのが一般的です。抵当権設定登記には、土地の登記済証(権利証)もしくは登記識別情報、発行から3ヶ月以内の印鑑登録証明書などの書類が必要とされます。
 質問の事例で、Aが抵当権を取り消すためには、「父親はAのいとこの借金のために土地を抵当に入れることを同意していなかった」と証明していかなければなりません。
 Aの父親は既に亡くなっており、土地を抵当に入れた経緯や同意の有無を直接確認することはできないので、当時の事情を知る人の証言や残された資料から証明をすることになります。しかし、父親が土地を抵当に入れたときには、最初に述べたように、抵当権設定契約に署名押印をしたり、抵当権設定登記のために権利証や印鑑登録証明書を提出しているはずですので、これらの書類が偽造であるとか、父親がだまされていたとの明確な証拠がない限り、父親は土地を抵当に入れることに同意していたものと判断される可能性が高いと思われます。
 よって、単に「父親が同意していたか確認できていない」というだけでは、抵当権を取り消すことは難しいといえるでしょう。
 なお、抵当権を取り消すことができない場合でも、父親から相続した土地の価値が既に登記されている抵当権により担保されている借金の金額よりも大幅に高額であるような場合には、Aは、いとこが設定した抵当権に次いで、同土地に第2順位の抵当権を設定し、借金をすることができる場合もあります。

 (担当弁護士)
  寺澤恵美

平成25年3月22日

カテゴリー: お金のこと

親のいない未成年の婚姻について

(質問)

 法律上、未成年者が結婚する場合には両親の同意が必要だと聞きました。では、両親共いない未成年者が結婚するには、どうすればよいのでしょうか。

(回答)

 「未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない」と民法737条1項に規定されています。この規定の目的は、必ずしも十分な判断力をもってはいるといえない未成年者が結婚するにあたって、父母の同意を婚姻届受理の要件とすることで、未成年者を保護しようという点にあります。なお、父母の一方が同意しないとき、分からないとき、死亡したとき、意思を表示できないときは、他の一方の同意だけで足ります(民法737条2項)。
 それでは、両親が共に死亡しているような場合や両親共に所在が不明でその同意を得ることが難しいような場合に、未成年者がどうすればよいのでしょうか。このような場合について民法は規定していませんが、実務上は、父母の両方がいない未成年者が結婚する場合には、父母に代わる者、例えば未成年のための後見人など、誰かの同意は必要とされていません。未成年者を保護しようという目的からすれば、父母の両方がいない場合でも、後見人の同意などを得るといった手続が必要なようにも思われますが、そもそも結婚に関してはできるだけ当事者の自由な意思を尊重すべきとの考えから、父母に代わる者の同意までは要求しない取扱いとなっているのです。

 (担当弁護士)
  吉田瑞穂

カテゴリー: 家族のこと

法人が成年後見人になること

(質問)

 法人が成年後見人になることの意義、特に、社会福祉協議会が法人後見を行うことのメリットは何でしょうか。

(回答)

 社会福祉協議会をはじめとする法人も成年後見人になることができます。高齢者人口の増加や各種福祉サービスを受けるための契約締結の必要などから、成年後見制度の利用件数が大幅に増加し、かつ、事案が多様化していくなか、成年後見人のなり手を確保することにつながるものと期待されています。
 法人が成年後見人になることのメリットとしては、法人には人間のように寿命がなく、成年後見制度の利用を必要とする方が比較的若い方であるなど、後見業務が長期間にわたる場合でも、継続的に後見業務にあたることができます。また、法人内で職員が連携することにより、多様な後見業務に対応することができます。この点、各種法人のなかでも、社会福祉協議会が法人後見人になる場合には、社会福祉協議会が有する各種福祉サービスに関する情報とノウハウ、また、地域福祉のネットワークをした後見業務が可能になります。さらに、その公共性、公益性から、資産、収入が乏しく、後見のなり手が見つかりにくい方が成年後見制度を利用する場合の受け皿となることもできます。
 他方、法人後見の場合に注意するべき点としては、人事異動により担当職員が交代した場合の引継や職員間での後見業務に関する情報の共有など、複数で事務処理にあたることから生じる引継及び連携に際し、事務処理の停滞がないようにすることと、法人内での後見業務に関する監督体制を整えることなどがあげられます。

 (担当弁護士)
  狩倉博之

カテゴリー: 家族のこと