父親の死後、父親の相続をめぐって兄弟間でトラブルにならないようにするには、どうしたらいいのでしょうか。

(質問)

 兄が多額の負債を背負っています。父親の財産もあてにしている様子です。
父親の死後、父親の相続をめぐって兄弟間でトラブルにならないようにするには、どうしたらいいのでしょうか。

(回答)

 亡くなった人(被相続人)が遺言を残していない場合、被相続人の財産は民法で定められた割合(相続分)に応じて相続されることになりますが、遺産の評価・分け方をめぐって相続人間で協議がまとまらず、長期の争いになることが少なくありません。
 一方で、法的に有効な遺言が存在する場合には、基本的に遺言書で被相続人がしたとおりに遺産が分けられることになりますので、相続手続等も円滑に進むと考えられます。
 このように遺言書は、遺産をめぐる相続人間の紛争を防止するのに役立つといえますが、遺言はあくまで被相続人の自由な意思に基づき作成されなければなりません。質問の場合、仮に弟が父親に無理に遺言書を書かせるようなことをすれば、遺言書の効力が問題となったり、相続人の欠格事由(民法891条4号)が問題となったりする可能性があります。
 また、遺言の方法については、複数の方式があり、それぞれの方式について民法で厳格に規定されていますので、せっかく作成した遺言書が無効と判断されることのないように、それぞれの規定に従うこと、遺言の内容を明確にすること等の注意が必要です。通常利用されている自筆証書遺言の場合、全文自筆により作成する他、日付の記入が必用で、署名・押印も被相続人本人が行うことが必要です。これらの要件を欠くと無効になりますので、費用がかかりますが、公証役場で公正証書遺言を作成するのが確実です。
 仮に父親が弟に有利な内容の遺言(例「財産の全てを次男(弟)に相続させる」)をした場合であっても。民法は、兄弟姉妹以外の相続人には一定割合の相続財産(遺留分)を保障していますので、兄はこの遺留分を弟に主張していくことができます。したがって、相続争いを防止するには、この遺留分にも配慮した遺言書を作成することが望ましいといえます。


 (担当弁護士)
  吉田瑞穂

カテゴリー: お金のこと