隣家の猫の糞尿被害で悩んでいます。

(質問)

隣家の猫の糞尿被害で悩んでいます。飼い主に対しどのような請求ができますでしょうか。


(回答)
動物の飼育に関しては、「動物の愛護及び管理に関する法律」が「動物の所有者又は占有者は、・・・動物の愛護及び管理に関する責任を十分に自覚して、その動物をその種類、習性等に応じて適正に飼養し、又は保管することにより、・・・動物が人の生命、身体若しくは財産に害を加え、生活環境の保全上の支障を生じさせ、又は人に迷惑を及ぼすことのないよう努めなければならない」(法律7条1項)と規定しています。また、この法律に基づく「神奈川県動物の愛護及び管理に関する条例」も、ペットが他人の土地を汚物で汚さないように訓練するといった飼い主の守るべき事項を定めており、飼い主にはペットが他人に迷惑をかけないように努めなければならない義務があります。
ご相談は、隣家とのトラブルということですので、まずは話合いによる解決を目指し、隣家の飼い主に猫による被害の状況と飼い主の責務を説明し、猫の侵入防止のフェンス設置など、必要な措置を行うよう求めてみるのがよいと考えます。また、市役所や保健所などの行政の相談窓口に相談し、先ほど挙げた条例に基づき、飼い主が守るべき事項に違反していることを報告し、役所から指導等を行うよう求める方法も考えられます。
それでも飼い主が適切な対応をしてくれないようであれば、民法718条に、動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害について、動物の種類及び性質にしたがって相当の注意をもってその管理をしていなかった場合には、損害を賠償する責任を負うとの規定がまりますので、飼い主が、相談者の敷地に猫が侵入して糞尿をしていることを知りながらこれを放置し、相談者からの求めや役所の指導等にも応じなかったこと等の事情により、相談者が社会生活上我慢しなければならない限度を超えて糞尿被害を受けたと判断できれば、裁判者に対して、飼い主に慰謝料等の損害賠償を求める訴えを提起することが考えられます。その際、相談者が猫の侵入防止のために自費でフェンスを設置しなければならなかった場合には、この費用について、賠償の対象になる可能性があります。
なお、訴訟手続の前に、飼い主を相手方として、裁判所で話合いを行う民事調停を申し出るという方法も考えられますが、飼い主が調停に欠席した場合や調停での話し合いで合意できなかった場合には、調停での解決はできません。


(担当弁護士)
吉田 瑞穂

カテゴリー: 相続のこと