夫の不貞が原因で離婚しましたが、夫の支払い能力の関係で慰謝料の分割払に応じました。ところが、支払が半年も滞っています。残金の一括支払を求められるでしょうか。また、延滞金を請求できるものでしょうか。

(質問)

夫の不貞が原因で離婚しましたが、夫の支払い能力の関係で慰謝料の分割払に応じました。ところが、支払が半年も滞っています。残金の一括支払を求められるでしょうか。また、延滞金を請求できるものでしょうか。
(回答)

慰謝料残金の一括支払については、分割払に応じた際に、支払が滞った場合の「期限の利益損失」について合意していたか否かによります。「期限の利益損失」の合意とは、支払が滞ったといった場合に未払の残金を一括して請求できることにするもので、この合意がなされていれば、残金の一括支払を求めることができます。一方で、この合意がなされていない場合には、当然には一括払を求めることはできないことになります。
 延滞金については、支払期限を守らなかった場合、支払期限を途過した時点から遅延損害金として請求することができます。この点、前に述べた期限の利益損失の合意がある場合には未払の残金金額に対する遅延損害金を請求することができますが、合意がない場合には期限が来ている分に対してのみ遅延損害金を請求できることになります。遅延損害金の利率については、当事者が合意により定めていない場合には、年5%となります(民法第四百十九条)。
 本件では、慰謝料の分割払に応じる際、どのような合意がなされたのかが明らかではありませんが、後日支払が滞った場合等に備え、慰謝料の金額、分割払の回数、各回の支払期限及び支払額、期限の利益損失、延滞損害金の利率等については書面を取り交わして明確にしておいた方がよいでしょう。


 
 
(担当弁護士)
 伊藤 安那 







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