家族限定の車両保険に加入していたが、長男が無断で友人に車を貸してしまい人身事故を起こしてしまった。

(質問)

家族限定の車両保険に加入していたが、長男が無断で友人に車を貸してしまい人身事故を起こしてしまった。今後、自賠責保険を超える損害賠償を請求される可能性がある。この場合、その損害を長男の友人に賠償させることはできるのか?また、所有者責任を問われるのか?
(回答)

実際に自動車を運転し、過失により人身事故を起こしたのは長男の友人ですので、長男の友人は、被害者に対し損害賠償責任を負っています(民法709条)。
もっとも、自動車による人身事故については、「自己のために自動車を運行の用に供する者(運行供用者)」も損害賠償責任を負うことになっています(自動車損害賠償保障法3条)ので、質問者がこの「運行供用者」にあたると、質問者も被害者に対する損害賠償責任を負うことになります。
「運行供用者」にあたるかどうかについて、裁判例は、被害者救済の点から広く自動車の運行による危険を防止できる立場にある者は責任を負うべきと考えているようであり、間接的であっても自動車の運行をコントロールできる立場であれば、「運行供用者」と判断されることが多いようです。
ご質問の場合については、自動車の所有者である質問者が家族である長男の自動車使用について容認していたと思われること、その長男の意思で友人に自動車を貸していることから、質問者は間接的に自動車の運行をコントロールできる立場にあったといえ、質問者は「運行供用者」にあたると考えられます。
質問者が「運行供用者」にあたる場合、質問者は長男の友人と連帯して損害賠償責任を負うことになりますので、質問者が被害者から損害賠償を請求された場合、被害者に対し損害賠償金を支払わなければならず、長男の友人に請求するように求めるなどして支払を拒むことはできません。
なお、質問者が先に被害者へ損害賠償金を支払った場合には、本来長男の友人が負担すべき賠償金額の全部又は一部について、質問者から長男の友人に支払を求めることができます。

 (担当弁護士)
  加藤修一

平成25年4月17日

カテゴリー: 事故のこと